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「カナエの星」の軽さについて

カナエの星 (電撃文庫)


灼眼のシャナ」の高橋弥七郎×いとうのいぢコンビ最新作。すでにいろんなところで評判が出ているが、よくもわるくも軽い話だった。


作中で描かれるのは「世界の『未来』を懸けた運命の戦い」なのだが登場人物に誰一人として危機感を抱いている者がいない
主人公、「点火済みの爆弾」こと直会カナエは考えるより先に体が動くタイプで、誰かを助けるために常に全力を尽くし、自分の身は顧みないという特殊なキャラだ。主人公に力を与えた「星平線のそよぎ」はお気楽思考に見えるが、その実、何を考えているかつかめない。敵対する「ハインの手先」は主人公が動き出してからようやく重い腰をあげたように行動を開始する。その他の人物はそもそもに戦いを知覚できない。
当事者以外は知り得ない戦いで、その当事者からも切迫が感じられない。
そして、両陣営の戦う理由がはっきりしていない。現状、主人公サイドは振り払う火の粉を払っているのみで、「ハインの手先」は世界を破滅に導くのが目的のようだが、なぜ破滅を目論んでいるのかまでは描かれていない。


そんなわけですごく軽い話に見えるが、登場人物の関係性は重い。
灼眼のシャナ」後半で描いていた「愛する人と一緒になるために、愛する人と戦う」という要素がこちらでは1巻から既に前面に出されている。ただまだ愛という自覚は両者になさそうだけれど、なにせ今作では主人公は中学二年生ヒロインなんて小学五年生である。しかしこの二人はお互いを守るという気持ちだけは強くて、その感情がどう動いていくのかは見ものである。



そんなわけで主人公とヒロインがふわっとした感じで争う話なのだが、自分はこの軽さにすごく嫌な感じを受けるのだ。
灼眼のシャナ」で同じ構図だと、どれだけ戦いの規模が大きくてばったばったキャラが死んでも、「この戦いには意味がある」「この犠牲には意味がある」って感じの安心感があった。また、どこまでいっても世界規模の夫婦喧嘩で済むっていうw。
要は対立する二人が確固たる目標を掲げていたから軸がぶれずに済んでいたんだけど。それに比べると今作は中学生と小学生のカップルが『世界の救済』『世界の破滅』なんていう抽象的な理由に乗せられていいように操られているようにしか見えない


あと「カナエの星」には大人が出てこない。
主人公たちはエスカレーター式名門校の学生寮で寝食していて、この学生寮の管理人は高校生だ。学校の先生もどこかズボラで頼りない。そして主人公とヒロインにはおそらく両親がいない
ラノベで主人公の親がいない設定なんて珍しくもないがこの作品だと不安で不安で仕方がない。前作「灼眼のシャナ」で執拗に描写しまくった親子の関係が今作ではどこにも見当たらない。それがこわい。
この子たちほんとどうなるんだろう。続きがすごく気になる。
ということで続きを出すためにもみなさん1巻買いましょう。


・追記
電撃 - BD-BOX『灼眼のシャナ III-FINAL-』と『灼眼のシャナ S』の発売を記念して高橋弥七郎先生&いとうのいぢ先生からコメントが到着!

カナエと摩芙も、イラストをいただくことでイメージがより明確になりました。特に摩芙は、この子に苦難を与えるのは躊躇われるほどに可憐です。まあ、与えるのですが。

やっぱり苦しめるんじゃないかあああああうわあああああいやだああああああああああああ