「コスプレイヤー榛名 妄想拡張ディスク」感想
この本は「艦これ」こと「艦隊これくしょん」のキャラクターを扱った本ではなく、「艦これ」の“コスプレイヤー”を題材にした小説である。「艦これ」の榛名のコスプレに身を包んだ少女・春菜がカメコおじさんと肉体関係を持ち、深い深いコスプレイヤーの世界へとはまっていく――そんな話だ。
コスプレイヤーは我々に夢を与えてくれる存在に他ならない。ギラギラとした日差しが照る猛暑でも寒風吹き荒む荒天でもコスプレイヤーはコスプレをするのを全く厭わない。二次元の存在であるキャラクターたちが彼ら彼女らを媒介することによりあたかも三次元に現れたかのように錯覚する。
そんなコスプレイヤーを題材にし、さらにはそれらを汚す“コスプレイヤー同人”は我々に与えられた夢を壊すものではないか? いわゆる、ナマモノ系の同人と同様の問題を孕んでいるのではないか? 誰かを汚し、貶めてはいないか? いいのか? いいのか? こんな本出して? いいのか? いいんだよ!!!!!!
断じる。“コスプレイヤー同人”は我々の夢を砕いてなどいない。我々に新たな夢を与えてくれる。それは可能性だ。コスプレが、コスプレイヤーが大好きな我々が、いつも胸中に抱いている可能性が、頭の中でめぐらせている妄想が溢れ出すのだ。それはとても自然なことで、何人にも妄想は止めることなどできない。
私達の妄想が拡張されるのだ。そう、この妄想拡張ディスクならね。
さて、本編の感想だが、素晴らしい、素晴らしいただれ具合ですわぁ!!
コスプレを始めるきっかけを描写している第1章の時点でもう自分のドツボにダイレクトアタックかましてくる。きわめて真面目で優等生な風の高校生春菜ちゃんが初めてできた彼氏によって日常的に性欲のはけ口にされ、学校から帰ってはセックス。休みの日にあってはセックス。セックス、セックス、セックス&セックス……性技だけがどんどん身についていく。
初めてできた彼氏が性欲に忠実すぎるおサルさんだったばかりに春菜ちゃんの心に闇が形成されていく。そんな中、彼氏にコスプレを勧められ……。
この完璧な流れには賞賛を禁じ得ない。一女子高生の心に闇が生まれる過程がとっても自然でエロくて面白いのだ。以降の章ではそんな彼女の膨らみきった闇が描かれる。
惜しむべくは膨らんだ闇が爆発する展開がないことだが、闇堕ち系エロ漫画でもそうだけど、どこをオチとするかっていうのはこれ系では非常に悩ましい問題で、個人的には成熟しきった闇を爆発させて存分にぶちまけてほしいところで、そういう意味で最近では新堂エルの「変身」が最高の出来だと思うのだが、闇に消えていく感じな本書も悪くはない。
読んでいる途中は、頼りになっていたカメコおじさんが奥さんバレして、頼れる人が消えて新たに見つかった人が……みたいな展開期待したけど、そういう展開はなしですかね?