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バス事故で死んだ24人の高校生と、生き残った2人の物語『テルミー』

テルミー1 きみがやろうとしている事は (集英社スーパーダッシュ文庫)

 

何の因果か、運命のいたずらか、事故にあったバスに乗車していた高校生で唯一の生き残りである鬼塚輝美に、死んだ24人の魂が憑依した。

もう一人、バスに乗らなかったことにより生き残った灰吹清隆と共に、死んだ24人の“最後の願い”を叶えていく。

 

この物語の素敵なところは、主人公である二人はなんら特別な存在というわけではないところだ。24人の遺志が宿った鬼塚輝美は、死者の無念を払う霊媒師やエクソシストなどではもちろんないし、死者の願いを叶えるにあたって特別な力や頭脳を持っているわけでもない。二人は奇跡的に生き残ったとはいえ、悲惨な事故により多くの級友・大事な人を一度に失った「事故の被害者」であるという事実には何のゆらぎもない。

死者の遺志やその遺族たちと関わりながら、自分自身と向き合っていく。この物語はそんな話だ。

 

 

死んだ人の願いを叶えました。→遺族も喜びました→無事に成仏できました。→お涙頂戴ハッピーエンド

テルミーは、それだけで終わる話ではない。

 

 

死とはなんなのか、生きている僕達はなにをしていけばいいのか。

生とはなんなのか、死んでいく彼らはなにを僕達に願ったのか。

そういった誰もが常に考えている生と死について。様々な人の考えに触れながら、自分の中でも答えを探して、生きていく。『テルミー』はそんな物語である。

設定は荒唐無稽なファンタジーだが。描かれているのは、紛れも無く、今を生きている自分たちの姿なのだ。