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演じられたタイムトラベル(土橋真二郎)読了

演じられたタイムトラベル (メディアワークス文庫)


 作者の前作である「生贄のジレンマ」が実写化するそうだが、実写という媒体でこの作者の作品の良さを引き出せるかは甚だ疑問だった。たしかに「生贄のジレンマ」の舞台装置は大掛かりで、映像にするとよく映えそうではあるがあくまであの作品のポイントは、ギリギリの状況での登場人物の心理描写であって。ただたんに大きな舞台装置と綿密なシステムを揃えればあの緊張感が出せるかというと、違うのではないかと、ずっと思っていた。
 本作を読んでその思いは強まった。
 今回の舞台装置は、床に方眼が描かれたただっぴろい密室。それだけである。その密室で登場人物たちは、「ショッピングモールの中でゾンビから逃げている」という状況を演じなければならない。実際にはもちろんゾンビなんておらず、壁も敷居もない。物品もない。そんなただの密室の中をキャラクターたちは逃げ惑う。いないゾンビから必死で逃げる。実際にはいなくとも、プレイヤーにとっては紛れもなくそこにショッピングモールが、ゾンビが存在している。読者としてはただただ圧倒されるばかり、これでこそ土橋真二郎である。


 肝心のゲームシステムの方は正直いって詰めが甘々である。しかし素人制作のゲームという設定とオチで、作品としてうまく整合性がついているのがすごくずるい。ラストは賛否両論ありそうだが自分には好みの終わり方だった。
 同著者の殺戮ゲームの館と世界観がリンクしているので、もし興味があるならそちらから読むことをおすすめする。こちらだけでも楽しめるので無理に読む必要はない。
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