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自分の居場所はどこにあるのか「知らない映画のサントラを聴く」

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

 

 

この物語の主人公は自分と似ている。

23歳で独身で無職で親元に寄生していて目的意識は薄く、自分が承認を受ける場所を求めている。

もちろん自分は女ではないし、まるっきりの無職でもない。バイトをして得た、多少のお金を実家に納めて過ごしている。

しかし本質的には彼女となんら変わりはない、彼女は家事全般を受け持つことで、なにもしない無職が家に住んでいいという権利をもらっている。「ここは自分の家だし、この家には自分が必要だ」という承認を受けたつもりになっている。しかし心の奥底では思っているのだ、ここには自分は不必要だということを。

 

 

子供のころは誰しもが認めてもらえる、どんな陳腐なことでも周りの大人たちは笑ってくれるし褒めてくれる。子供のころが楽しかったのはそれが子供だったからである。子供のころはなんでもできる気がしたし、実際やろうと思えば何だってできたのだ。

 

 

知らない映画のサントラを聴く」は自らの存在の話である。

別に哲学的な内容ではない、誰にでもある普通の話だ。23歳無職がとある事件を通して、何のために自分がここにあるのかを考える話だ。

突如家を追い出された23歳無職女・枇杷。いつも枇杷を支え、認めてくれた親友・朝野。大切な親友の元カレ・昴。三者とも、自分の存在が何のためにあるのかを必死で探し求めている。探して探して回って回って空転しつづけている。

その姿が、姿勢が、行動が、感情が、ただただエネルギーに満ち満ちているのだ。

 

 

人は、大人になったその時から自らの承認の場所を探し続けていくのだと思う。

なにか躓くときもあるし、ふらふらと倒れる日もあるけれど、再び立ち上がって、速度を上げて、回りだすのだ。

自分も回ってみようか―――そんなことを思える、パワフルな1冊だった。

 

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)