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自分が面白いと思った本が、他の人にも読まれる喜びは何物にも代えがたい「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部

 

 

ビブリオバトル、GO!」

 

読書が好きな人ならば誰しもが抱く感情がある。

「自分が面白かった本を他の人にも読んでもらいたい、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。」そんな感情。

かくいう自分もブログという形式で様々な本の感想を書きなぐっているわけだが。

他人に本をおすすめするスタイルの一つにビブリオバトルというものがある。これは実際に日本各地で行われているゲームで、大会まで開かれている。参加者は自分が面白いと思った本を持ち寄り、5分間のスピーチでその本の魅力を伝える。全員の発表が終わったあとに、「一番読みたくなった“本”」に対して投票を行い、チャンプ本を決定する。

そんなビブリオバトルを描いた史上初のビブリオバトル小説がこの「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」である。

 

 

SFに傾倒し、SFを愛する少女・伏木空はビブリオバトルというものを始めて知って、自らも好きなSF小説をおすすめするためにビブリオバトルに参加する。自分が大好きな小説で誰が読んでも面白いだろうと思うとっておきの一冊を発表する。5分しかない短い時間で、どうやってその本の魅力を伝えるか、どんなエピソードを紹介するか、悩んで、苦心して、そうしてようやく行われた発表は散々な失敗に終わる。

「これは絶対面白い!」と思った本が誰にも触れられない歯がゆさ、自分の感想が歯牙にもかけられない悔しさは深く共感できる。自分もそんなときは「なんでこんな感想なんて書いているんだろう」と落ち込んだりもする。それでも、「他の人にもこの本を読んで欲しい」という気持ちは止められないのだ。彼女もSFを読んでみたいと思わせるために失敗を乗り越え再挑戦する。

「自分がおすすめした本が読まれて嬉しい」という本読みならあたりまえに抱く感情が本書では描かれていく。実際に、彼女が読んでいる本は面白いものや、読んでみたくなるものばかりで、本当にSFが好きなんだというのが伝わってきて読み手まで幸せになれる。面白い本をみんなで読むのは、それだけで幸せなのだ。

 

本書には、SF好きですこし不思議な少女・伏木の他にも個性的で魅力的なキャラがたくさん登場する。

ノンフィクションに傾倒し、伏木と対になるクール系の少し堅物な男子・埋火武人

関西弁トークで他を魅了し、少しかっこつけしいな部長・安土聡

学術系の本に特化した知的クールな先輩・菊池明日香

意外な本のチョイスに定評がある小動物系男子・輿水銀

どんな本も腐女子目線で見てしまう小金井ミーナ

そんな彼らのおすすめする本も一癖や二癖もあるものばかり、ジャンルもみごとにバラバラで、これが小説だということを忘れそうになるくらいだ。この本1冊の中に、読んでみたいと思わせる本がたくさん詰まっていて、著者の読者家ぶりもうかがえる。著者が本気でおすすめしたいと思っているから、深みや面白さが生まれているんじゃないだろうか。

 

「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」読書好きにはぜひ読んでいただきたい1冊である。

 

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部

翼を持つ少女 BISビブリオバトル部