ラノベヒロインとして正しくない蒼井葉留
ラノベを書きたい主人公と、間違っている日本語を見たら添削せずにはいられない校正系女子が出会った時、青春ラブコメは始まらない。うん、始まらない。
「複雑な生い立ちの主人公がわざわざラノベを書くために寮生活を始めようとした矢先、自分の書いた原稿用紙にいつのまにかびっしりと赤ペンが!」という導入はすごい魅力的で素敵なんだけど、そこから同じ荘で部屋も近いことがわかって、超絶日本語オタクであることを知ってという展開の運びもいいんだけど、そこからラブコメが始まらない。始まらないんだこれが。
始まるのは生徒と教師の恋愛劇という昼ドラ展開で、それはそれでドラマチックなんだけど1巻から主人公とヒロインを置いて話が進んでいく。いや、主人公たちがまったく関わらないわけではないのだけど、ラノベ書きVS日本語オタク的な要素は欠片も残らない。
起こる事件自体は主人公たちの学園生活においてすごく大きな事件で、ヒロインである葉留の特異性を主人公が認知する大事なエピソードではあるんだろうけど、まったくラブコメの波動を感じない。富士ミスの波動を感じる。
これ最初からミステリだよって言われて始まればそこまで違和感ないのかもしれないけど導入はまるまんまラブコメのそれだし、公式のあらすじにはラブコメとしか書いていないから違和感がすごい。
とかく、話は面白いのだがまったく学園ラブコメのそぶりを見せないまま1巻は終わる。あれ、これ学園もののはずなのに1巻ではまだ学校生活が始まってないぞ!!
そう、この「蒼井葉留の正しい日本語」1巻は荘に越してきてから入学前までの事件であり、学園生活が始まるのは2巻からなのである。
まあシリーズものが決まっている作品なら多少スローペースでキャラを描いてゆっくりラブラブコメコメしていけば問題はないのだが、学園生活が始まると蒼井葉留は主人公とは別クラスになり、主人公の席の横には新キャラのツンデレ系美少女が!
まあまたこの六花ちゃんが凄まじく可愛いわけなのだがちょっと待った、表紙の女の子はどこへいった。それともこれはこういうことか、禁書で言うインデックスのような愛玩動物系ヒロイン(マスコット)として見てみようということなのか。蒼井葉留自体に特別な要素があることは間違いないのだが、それは一切明かされることなく、主人公との距離も縮まることなく、それどころか新キャラに差を引き離されていく。ラノベヒロインとして正しくない、どころか彼女は本当にヒロインなのか?
そんな富士富士ミスミスな謎が深まる「蒼井葉留の正しい日本語」。残念ながら続刊は出ないようだが
【悲報】 #ファンタジア文庫 から『蒼井葉留の正しい日本語』三巻を出すことは難しいようです。 #ラノベ - Togetterまとめ
多くのラノベ読みから支持された今作、少しでも興味がわいたならば読んでみてはいかがだろうか。
作中の犯人、わりと人間的にダメなやつらだと思うんだけどなあなあで社会復帰できてるっぽいのが少し気になった