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「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」感想

エヴァが終わった。もしかしたら口にも出てたかもしれない。すべて見終わったあと、最初に思ったのはそれだった。
なぜだか確信があるのだけど、おそらくこれが旧エヴァで描きたかった本来の終わり方なんだろうなと思えるし、旧エヴァを見た人々にかけられたエヴァの呪いがこれでやっと解かれたんだと感じている。不思議と落ち着いた気持ちもするし、全然やりきれない感じもある、おそらくまだ終わったあとの興奮のさなかにある。今のこの状態のうちに、エヴァを見て、感じたことを書き残しておくことにする。


ずっとずっと終わらないと思われてきたエヴァが終わった。その衝撃がとにかく強すぎる。ただこれは本来、旧劇場版で描かれるはずだった結末だが、旧劇場版から24年たった今だからこそ描けた結末でもあり、24年の時間がないとファンも受け入れられなかっただろう。というか自分は受け入れきれてない。
前回のラストから、シンジと綾波は式波に連れられ第三新東京市の跡地である第三村にたどり着く。そこでは生き残った人々が懸命に生活を続けていた。ぽか波牧場物語編である。ほんとこのくだりは見ていて辛かった。だってなんだか知らないけど、目が覚めたらいつのまにクラスメイトも好きな子もみんな大人になってるし、汗水たらして働いちゃってるし、トウジと委員長はなんか子供まで作ってるし、そんな中でシンジはずっとうだうだして隅っこでうずくまってずっと泣いてるだけ。ひとりだけ昔のまま、子供のまま。それなのに他のみんなはすごく優しくて、その優しさも辛くて。ちゃんと生きようとしているみんなと泣いてるだけのシンジくんの対比をまざまざと見せつけられて、劇場から飛び出してそのまま視聴断念させられそうになった。ぽか波の癒やしがなければ直視できなかった。つらすぎる。
でもシンジはその優しさを受け入れられたんだよね。正直、全然納得がいかない。好きだからとか言われてもわからないし、なんでそんなにすんなり受け入れられるの。なんでお前まで大人になってるんだよ。ほんとやってらんねえよな。Qであれだけ感情ぶつけ合って優しくしてくれたのなんてカヲルくんだけだったのに、なんでこんなに優しいのか、優しさを感じれるようになったのか。
めちゃくちゃ言いたい。「こんなのエヴァじゃない」「こんな優しい物語はエヴァではない」声を大にして言いたい。でも言えない。これが本来あるべきだった展開だって、心のどこかでわかってるから、大人になって、お互いにわかり合っていくのがぐうの音も出ないほどに正しくて、これ以上ない物語の運び方ってわかっているから。視聴者は24年。シンジたちは15年、いやたぶんそれよりずっと、何度も繰り返してやっとたどり着いたんだって、その積み重ねがなによりもわかってしまうから。


物語の後半、ぽか波が消失して、シンジはミサトさんのもとに戻り、フォースインパクトを起こし人類補完計画を完成させようとするゲンドウを止めに向かう。碇家親子面談編だ。シリーズを通して謎に包まれていた人類補完計画やゼーレのシナリオ、そしてゲンドウの意思が本人の口からすべて明らかになる。このくだりはほんとシンジが大人すぎて、何も言えなくさせられる。いままでろくに顔も見せなかったくせに急に呼びつけてろくな説明もなく変なメカに乗せて、乗れとか帰れとか息子どころか人に対しての態度じゃないだろそれみたいな扱いされまくって、ぽか波も消えるし式波もやっちゃうし、最終的に一人のわがままで人類ほぼ滅亡させるようなクソ親父相手にまともに会話しようと思えますか??? なんであんな冷静に落ち着き払っているの。しかもそんなクソ親父がさ「大人になったな」って言うの。シリーズ的にめちゃくちゃ感慨深いやりとりなのだけど、これを素直に受け入れられてるシンジがすごすぎる。このやりとりを素直に受け入れるには自分にかけられた呪縛は強すぎる。ミサトさんやらヴィレのスタッフには山ほど言いたいことはあるけど、シンジには何も言えることがない。つらい。


そして最後、「さらば、全てのエヴァンゲリオン」である。円環とかなんやかんや言っててここだけすごくまどマギ感あった。カヲルくんとかたぶんほむほむくらいループしてそうだし。ただこのパートに関しても、自らのアイデンティティでもあったエヴァを消す選択がすっとできたシンジさんがすごく遠い存在にみえる。エヴァを終わらせるって選択をやっとできたんだなって。シンジは大人になってしまった。われわれにも大人になる時が来たんだ。


他にもいろいろ考察したい部分があるが、興奮覚めやまぬこの状況では詳しい考察に限界があるだろう、それに一度みただけではとてもすべてを吸収しきれない大ボリュームであった。もっとほとんどパンイチ状態だった式波についてだとか、綾波はどのverだったとか、真希波レズ説崩壊とかいろいろ語りたいことはやまほどあるが、ここらでいったん筆を置くことにする。
youtu.be


おはよう。
おやすみ。
ありがとう。
さようなら。

『バビロン2』絶望の話

 

バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)

 

 

1巻のレビューは他サイトで

https://shimirubon.jp/reviews/1674379

 

 

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『この恋と、その未来。』森橋ビンゴは「一般向け」なのか?

この恋と、その未来。 -一年目 夏秋- (ファミ通文庫)

この恋と、その未来。 -一年目 冬- (ファミ通文庫)

 

ここ数日森橋ビンゴ作品は一般向けだからラノベ読者受けしない」みたいな言説が散見されるが、みんなに内緒で女の子と同性生活っていう思春期男子の股間に豪速球ドストレートな設定が読者からカテエラ判定されると思えないのだけど、その他のビンゴ作品にしても、この森橋ビンゴという作家は若者の繊細な感情の揺れ動きと思春期男子の股間の揺れ動きに関しては他の追随を許さぬ迫真の描写を続けてきて、それが評価されてきたんじゃないのか。イマイチ人気が出ない理由はいろいろあるのだろうけど、カテエラだからというのは大きな理由ではないと思う。

 

じゃあカテエラじゃないのに人気でないってなんなんだよとはなるだろうが、森橋ビンゴ作品は人に勧めづらいというのが原因の一つとしてあるんじゃないかと思う。

自分も森橋ビンゴ作品好きで、常々他人におすすめしてきたわけだけれども、どうも言葉を濁し気味にしてしまう部分があって、特に今回読んだ『この恋と、その未来。』2,3巻にはそういった部分が凝縮されていたように感じる。

 

この恋と、その未来。』2,3巻では、主人公のイヤな部分を徹底的に見せつけられる。一応、未来のことやまわりのみんなのことをちゃんと考えて行動しているような描かれ方をしているが、実際こいつ自分のことしか考えてないよね。周りの友達どころかヒロインである未来の姿まで見えていない。盲目状態。やることは全部から回っていくしなあなあを嫌ってなのか、あえて未来と距離を取る選択をしつづける一人相撲。俺はあいつのことを想って、ゆえに苦悩している――スイーツ(笑)。本当に頭の中が全部糖で出来ているんじゃないかってくらいの自己完結型恋愛脳で吐き気を感じるレベルのゴミクズ主人公っぷりである。

いやまあ散々貶したけど、一人の女の子のために頭抱えて悩んで意味不明な所業を始めるというのは思春期男子の行動描写としてはかなりリアリティあるし、そういう暴走気味なところもありながら前進してくれればそれはそれでよかったのだが、この主人公はどこまでも煮え切らない。

自分にクズの自覚があるなら直せばいい、直せないなら開き直ればいい。そんなスタイルならばまだ肯定できるし、共感もし得たが、この主人公は――というかこの森橋ビンゴという作家は、自らの欠点にある程度自覚的でありながら、それを改めたり視点を変えたりはせず、欠点のある自分をそのまま誰かに肯定してほしいという甘えがある。

要するに自分を自分が肯定できないから、誰かに肯定してほしいというお子様な承認欲求が隠しきれていないのだ。そういった思考が行動に出ているからどうにもガキっぽいし読んでいて気持よくない。かえって胸糞悪い。難しい恋だってわかっているのならさっさとどうするか決めてしまえばいいのにうだうだうだうだ3巻もかけやがって。

結局この作品が描いているのは性同一性障害の女の子と男の子の難しい恋愛」ではなく「性同一性障害の女の子を好きになってしまったこの俺の苦悩」なので、正直この巻まででも性同一性障害という題材を上手く扱えているとは言いがたいし、「ヒロインは性同一性障害の女の子」というキャッチから内容が気持ち悪い方向に乖離しすぎていて、人に勧めづらい。というか勧めるのがめんどうくさい。「いいから黙って読め」といえるような作品ではない。

 

しかし、この主人公の気持ち悪さはこの作品の確かな魅力でもある。だって、実際に中高生男子って気持ち悪いもん。同意も肯定も共感もしないけど、この思春期男子の気持ち悪さのリアリティ具合は他の作品で読めるものではない。ゆえに自分は森橋ビンゴ作品の主人公が吐き気を催すほど嫌いだが、森橋ビンゴ作品は大大大大大好きマジ愛しているのである。

誰だってみんな承認されたいに決まってるじゃんか。少しは他人のこと考えろバーカバーカ!

勝手に承認されろクズ!!


 

ドヤ顔で推理を披露しないと野村美月作品の主人公になれないのか『下読み男子と投稿女子』

下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)

 

この話こそ、バトルもダンジョンもない優しくて温かい日常的な話でよかったんじゃないのか?

 

下読みの男の子とラノベを書く女の子が出会って、多くの壁にぶつかりながらも一緒に作品を完成させていく。そういう話じゃ駄目なのか?

自分はこのお話に敵が必要とは思えない。いや、どうせ敵を出すならもっと清々しいまでの悪役が必要だった。純粋な悪意で動いているような悪党を二人の力で打ち破るような勧善懲悪のほうがまだずっとよかった。

主人公は、善意でひた隠しにされてきたことを、心の奥底に封印してきた感情を、さぞ自分だけが完璧に推理したかのように、それこそミステリ作品を楽しむ読者のように、得意気に自慢気に推理を披露して楽しかっただろうか? 主人公の推理は他の登場人物の感情を一切無視している気がしてならないのだ。その事実はなぜいままで秘匿され続けてきたのか一切考えなかったのか? 主人公の口から全てを明かしたところで果たしてみんなの納得が得られるだろうか。全てわかったかのように他人の感情を暴きだすのはさぞ楽しいことだろう。胸がすくだろう。心が弾むだろう。お前だけが気持ちいい世界でお前だけが一生生きればいい。独善、偽善、欺瞞、傲慢、エゴ。吐き気がする。

 

結局何も解決してはいないのだ。なにがしたかったんだこいつは?

氷雪も氷雪の祖母も何も変わらない。騒ぎがまとまったのは主人公以外が大人だったからだ。自分の押し通したい我を我慢して譲りあった結果だ。

 

少年と少女が出会い、事件と直面し解決していくというストーリーラインは「文学少女」や「ヒカル」で繰り返し描かれてきた野村美月の得意分野だ。問題を抱えた少年と少女が出会うことで新たな問題が発生し、それを解き明かしていくという物語は非常に楽しく、読んでいて心地よい気分にさせられる。

「下読み男子と投稿少女」はその作者お得意のラインに下読みの男の子とラノベを書く少女を乗せただけだ。ただの少年と少女は物語というレールに乗せられたばかりに「事件」に巻き込まれる。なんでライトノベル書くって話で家庭問題の解決なんてやらなきゃいけないの???

カテエラについて散々作中でも語っているような作品でさえもカテゴリーエラーに振り回されている事実に暗澹とした気持ちになる。本書は野村美月作品の中でも明確に失敗作といえる作品だろう。しかし、失敗作でも、いや失敗作だからこそ、自分はこの作品を多くのラノベ投稿者に、新人賞の下読みに、大勢の読者に読んでみてほしいと考える。

本書には少年と少女の優しいふれあいの中に多数の厳しい現実がつめ込まれている。どんな大作であろうと万人に愛されることはないし、人気作がある一方で多くの作品はほとんどがたった一人の手によってこき下ろされていく。自分の書きたい物語は必ずしもみんなに愛される内容ではない。それらの厳しい現実は、投稿者には勇気を、下読みには覚悟を、読者には感動を与えてくれるだろう。

 

 

『ただし少女はレベル99』そしてレベル1の僕ら

ただし少女はレベル99 (講談社ノベルス)

 

 

汀こるもののレベルシリーズ(?)の1巻。

中学生の出屋敷市子は不可能を可能にする女だ。すごい超能力?というか魔法を使える。頭のネジもぶっとんでる。何考えてるか判んない。地味。根暗。異分子。

ゆえに出屋敷市子はいじめられる。しかしそのいじめすらも跳ね除ける能力を持っている。出屋敷市子に害なそうとしたものは決まってなにかおかしな現象に巻き込まれ記憶も定かではなくなる。精神的にも達観していて多少のことでは動じない。she is a perfect human.まさにレベル99。神である。本人によればまだ神ではないらしいが。

出屋敷市子の周りで起こる事件も大概おかしなことばかりだ。というか周りに集まってるやつらがおかしい。天狗とか狐とか、家族構成とか親戚関係はちょっとよくわからないけど、お父さんはいるようだ。ものすごい変人だけど。良識という名の皮をかぶった宇宙人みたいな。出屋敷市子の関係者は、他にもたくさんいるようだけど、全員が全員おかしな人だと思う。

そんな、そんなレベル99な、出屋敷市子が、こわいのだ。

 

かわいいし、なんでもできちゃう出屋敷市子はすごいけど、彼女をみても出屋敷市子のようになりたいとは思わない。それにレベル1がどう頑張ったってレベル99にはなれない。現実世界のレベルは簡単にはあがらない。毎日学校に通って地道に勉強しても、毎日会社に通って真面目に仕事しても、どれだけ経験値を稼いでも、自分たちにできることなんて限られていて、不可能はずっと不可能なままで、僕たちはずっとレベル1のままなんだ。

 

続刊のタイトルにも表されているように、この物語はレベル99の出屋敷市子が徐々にレベル1に近づいていく物語なのかもしれない。そうしていくにつれ出屋敷市子は己の無力さをしっていくだろう。レベル99は完璧だ。しかしそれゆえに人間ではない。神だ。中学生女子で神とかちょっと。「かみちゅ」じゃないんだから。

 

かみちゅ! 1 (電撃コミックス)

かみちゅ! 1 (電撃コミックス)

 

 

 

出屋敷市子はその力でさんざん暴れまわる。時には力の暴力とでもいえるような清々しいまでのチートっぷりを発揮してあらゆる事件を解決する。

和風伝奇ファンタジーな連作短編だが。最後にはそれまでの物語が収束していく。

それぞれの短編自体も独創的で面白いが、やはり出屋敷市子の成長物語としての側面が一番強く、続編の内容が非常に気になる1冊だった。

 

割りと納得感のあるあとがき

 

ただし少女はレベル99 (講談社ノベルス)
 

 

 

このタイトルはなんでしょう?「○○○○○○○○殺人事件」

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

 

 史上初のタイトルあてミステリ。

小説で最も大切であるタイトルを隠しているその性質上、本書の内容に関しては何を語ってもネタバレになる。

しかたないので表紙のデザインについてでも語ろうか

赤髪のヒロインと真っ青な背景にピンク縁のタイトル。うーん最悪のコントラストだ。これデザインした人は目が痛くならなかったのか。いまPCモニタで表紙みてる自分は目が痛い。「○○○○○○○○」なんていうどんなフォント使っても視認性悪いクソみたいなタイトル投げられてデザイン思い悩むのはわかるけど、そこはもっとロゴデザイン工夫するとかさあ、講談社ノベルスってロゴのデザイン適当な表紙ばっかりだけど編集方針でもあるんすかね、「アニメ・マンガっぽいデザイン禁止」みたいな。なんにせよこの色のバランスは見づらい

だいたいさあ、何この背景。アメリカの一般的な家庭で振る舞われるケーキとかもそうだけど、食欲減衰色をこんなに全面に使うなって。せっかく肉感ある女の子いるのに台無しだよ。これさあわざわざ写真を青く加工してるじゃん、元の写真の色がどんなかわからないけど青一色はないだろ。興ざめだよ興ざめ。

あらすじにも書いてあるけど、舞台は南国なんだよ。初見の人、この表紙みて南国の孤島が舞台のミステリに見えますか? 表紙の娘寒そうだなとか思わない? 少なくとも暑そうにはみえない。

女の子の立ち位置も謎だ。本の枠に対して棒立ちの配置である。背景があるけど、地面に立っているという角度でもない。落ち着いた単色の背景に対してちょっと下品なファッションというのもマイナスポイント。もっと下半身かくして顔大きい感じにトリミングしたほうがよくないか。そしてなんで中途半端に頭が切れてるんだ? 発注段階で切れていたから仕方なくこういうデザインにしたっていうならわからなくもないけど、どうせそれなら講談社BOXみたく額縁デザインに収めたほうが自然じゃないか? 全体的なスペースには余裕が有るのに上の方だけやたら窮屈に感じる。下には帯があるっていうのもわかるけどさあ。特に講談社ノベルスって結構帯大きいから、タイトルやキャラを帯に被さないようにデザインするのって大変なんだろうけどさあ、角度とか変えればどうとでもなったんじゃないか。

キャラのエッジに影つけるのも禁止されてたりするのだろうか、屋外なのにエッジの影がないのもかなり不自然だ。

 

 

キャラがかわいいのにもったいない。あ、本の内容は面白かったです。

逆説的に言うならば、内容が面白いのに表紙がこんなにクソなのがもったいない。みんな買え!

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

 

 

登場人物全員頭が悪い「世界寿命と最初の七日間」

世界寿命と最初の七日間 ―雨宿り街短編集― (MF文庫J)

 

同名楽曲のノベライズなのだけれども、楽曲の歌詞をそのまま10倍くらい綿棒で薄くぺらっぺらになるまで引き伸ばして何の味付けもせずに仕上げたような内容でした。素材の自然のままの味をお楽しみください……ただし生肉!!みたいなっ。

 

日々鬱屈とした日々を送ってる人々が、いきなり人気者になったり人と入れ替われる能力をみにつけたり、自分の分身を創りだしたり、そんな突拍子もない能力を手に入れて、特に思い悩むこともせずに「こんな素晴らしい能力が手に入るなんて自分はなんて運がいいんだ! 神様ありがとう!!」と、とりあえず神と母親に感謝しておく頭の悪いラッパーみたいな思考回路の末にろくでもない力の使い方をするというだけの話。別段オチもない。

作者がそのまま頭の悪い作曲家だから仕方がないのかもしれないが、能力に対する考え方も能力の考え方も頭悪すぎて読んでてイライラが募りに募っていく。最初から最後まで「国のことは全部偉い人が決めてて僕達庶民は何も出来ない」みたいな小学生レベルの思考の登場人物しか出てこない。

 

こんなポエムノート以下の便所紙がMF文庫Jから出版されたのが驚きである。kindleセールで買ったから便所紙にもならないんだけどな。

 

貶してばっかりでも仕方ないで、よかったところ探しもしよう。

ネットで人気になったり、王様になった主人公がファンや群衆に振り回される描写が作者の心の闇っぽくて少し興味深かった。どの短編にもちゃんとしたオチが付かず投げっぱなしなのだけど、それが作者の中でも答えが出てなくて現在進行形で悩んでる事柄なんだろうなあとか考えてしまう。なんにせよ娯楽からは程遠い一冊。

世界寿命と最初の七日間 ―雨宿り街短編集― (MF文庫J)

世界寿命と最初の七日間 ―雨宿り街短編集― (MF文庫J)