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バス事故で死んだ24人の高校生と、生き残った2人の物語『テルミー』

テルミー1 きみがやろうとしている事は (集英社スーパーダッシュ文庫)

 

何の因果か、運命のいたずらか、事故にあったバスに乗車していた高校生で唯一の生き残りである鬼塚輝美に、死んだ24人の魂が憑依した。

もう一人、バスに乗らなかったことにより生き残った灰吹清隆と共に、死んだ24人の“最後の願い”を叶えていく。

 

この物語の素敵なところは、主人公である二人はなんら特別な存在というわけではないところだ。24人の遺志が宿った鬼塚輝美は、死者の無念を払う霊媒師やエクソシストなどではもちろんないし、死者の願いを叶えるにあたって特別な力や頭脳を持っているわけでもない。二人は奇跡的に生き残ったとはいえ、悲惨な事故により多くの級友・大事な人を一度に失った「事故の被害者」であるという事実には何のゆらぎもない。

死者の遺志やその遺族たちと関わりながら、自分自身と向き合っていく。この物語はそんな話だ。

 

 

死んだ人の願いを叶えました。→遺族も喜びました→無事に成仏できました。→お涙頂戴ハッピーエンド

テルミーは、それだけで終わる話ではない。

 

 

死とはなんなのか、生きている僕達はなにをしていけばいいのか。

生とはなんなのか、死んでいく彼らはなにを僕達に願ったのか。

そういった誰もが常に考えている生と死について。様々な人の考えに触れながら、自分の中でも答えを探して、生きていく。『テルミー』はそんな物語である。

設定は荒唐無稽なファンタジーだが。描かれているのは、紛れも無く、今を生きている自分たちの姿なのだ。

 

 

『キノの旅 XIX the Beautiful World』の「プロローグ」と「エピローグ」について

キノの旅 (19) the Beautiful World (電撃文庫)

 「キノの旅」というシリーズは連作短編なわけだけど、その各巻での印象の大部分を占めるのは「プロローグ」と「エピローグ」だと思っている。

他に印象的な話がないわけではないが、読んでから時間が経ち、後々になって特定の巻を振り返るときに自分は「そういえばあの巻はああいうプロローグだったなあ」という風に思い返す。他に面白い話があったとしても、エピソード単位ではなく巻という単位で振り返った時にまず頭に浮かぶのはプロローグでありエピローグなのだ。

そんなわけで毎年の恒例と化しているこのシリーズに大きく期待している点はプロローグとエピローグが面白い話かどうかなのだが、だからこそ声とフォントを大にしていいたい。

19巻のプロローグとエピローグはつまらなかった。

まずプロローグ読んだ段階でオチが読める。いや、まあそれだけなら別に構わないのだけど、この話aとbに分ける必要ある?

時系列順に書いても成立しそうだし、プロローグから読んで考えさせられるようなテーマも感じない。何よりプロローグで設定を明かしすぎてエピローグへの期待感が薄い。重要そうなワードを先出ししちゃってるから頭のなかでも膨らませる余地が無い。正直、もっとプロローグに適した話があったと思う、「助けに来た国」とか。というか「助けに来た国」をプロローグにすればいいじゃん、こっちこそオチが肩透かし感あるんだから先にオチ割ったほうが面白いタイプの話だと思うんだけど。

別に他の話でもいいけど起承転結のある話をプロローグとエピローグにしてほしい。今回の話、起・承で終わってる。

 

他の話は面白かった。特に「天才の国」から「秀才の国」への流れが相変わらず皮肉たっぷりで好み。

 

密室の中で繁栄する〔少女庭国〕

〔少女庭国〕

 

 

久しぶりにやばい本を読んでしまったので全力でシェアさせていただきたい。

まずあらすじを引用する。

卒業式会場の講堂へと続く狭い通路を歩いていた中3の仁科羊歯子は、気づくと暗い部屋に寝ていた。隣に続くドアには、こんな貼り紙が。卒業生各位。下記の通り卒業試験を実施する。“ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ。時間は無制限とする”羊歯子がドアを開けると、同じく寝ていた中3女子が目覚める。またたく間に人数は13人に。脱出条件“卒業条件”に対して彼女たちがとった行動は…。扉を開けるたび、中3女子が目覚める。扉を開けるたび、中3女子が無限に増えてゆく。果てることのない少女たちの“長く短い脱出の物語”。

あらすじに目を通してもらえればわかると思うが、いや逆に一切わからないとは思うが、ご察しの通り本書は不条理SFである。しかしただのバトルロイヤル物とは断じて違う

 

わけもわからぬうちに密室に閉じ込められ、”卒業試験”という無理難題を押し付けられた少女は、扉を開けていくことにより瞬く間に13人に増える。扉を開けた向こう側には同じ境遇の少女が眠っていたのだ。いくつの扉を開けても増え続ける少女たち、終わらない密室に絶望し、憔悴しきった少女たちは”卒業試験”に取り組んでいく。

貼り紙に書かれた内容はひどくわかりにくいがつまりところ、少女が何人に増えたとしても「生き残れるのは一人だけ」ということなのだ。そう、一人が生き残るまでこの不条理な試験は続く。運命を受け入れ、それでもなお、最後まで懸命に生き抜く少女たちの姿の尊さたるや!!

少女たちが最後に選んだ生き様もすごく素敵なのだが、自分が好きなのはそんな少女たちの描き方――セリフの書き方にすごく胸がトゥンクする。以下本文より引用。

「ここどこ誰あなたたち」

「私仁科他四名、あなたここってどこだか判る」

「何? どこここ」女子は辺りを見回した。「何の部屋?」

「あなたも気づいたらここで寝てたの」

「私が何?」

「歩いてたらここに寝てたんじゃないの?」

「ていうかあなたら何?」

「私らも気付いたら閉じ込められてたの。卒業式行く途中だったんだけど」

「卒業式? 終わったの?」

「判んない。あなたも気付いたらでしょ?」

「何が」

「閉じ込められてんのが」

「私閉じ込められてんの?」

「多分」

「まじ何で」

「知らないよ。あのさ、説明するから聞いてくれる?」

「いいけども?」

「私たちも閉じ込められたの歩いてて気付いたら意識なくて。起きたらなんか知らない部屋じゃん。ドア開けたら隣でも人が寝てたの」

「どういうこと?」

「よく判んないけどそこの紙見て」

「何この紙?」

「私らのいた部屋にもこれ貼ってあったの。怖くない?」

「どこ貼ってあったの?」

「いたとこ」

「学校?」

「じゃなくてさ」羊歯子は当惑した。「え、いってる意味そんな判んない?」

ああこのわかりますか? 判らないけど分かる会話!!

主語とか述語とか接続詞とかぽんぽんすっとばして展開していくこの要領の得なさにすごくリアルな女子中学生を感じてしまう。理不尽にも密室に閉じ込められた女子中学生がこんな調子でお互い殺したり殺さなかったり生きたり死んでみたりする。面白くないわけがないんだなこれが。

閉じ込められた者たちが急速に現状を理解して(理解しないと話が進まないし)脱出を試みるのが密室を舞台にしたサスペンスやバトルロイヤルの作りだと思うが、女子中学生はまず共感を選ぶ。理解より先に不理解を共感する。しかし共感する者を増やしていく度に、より深い地獄へと落ちていく。

調べてみるとこの著者は他の作品でも同じようにリアルな口語体を交えた文体を使っているようで、しかしこの作品ほどこの文体に意味がある作品もないのではなかろうか。

 

一度読めば、この世界への尊さとかこうして小説という物語に触れている自分たちの儚さとか生きていることの窮屈さだとか人間社会についてまわるもろもろの汚い部分だとかに考え巡らすことを余儀なくされる。そんなお話でした。みんな読め。

 

こちらの考察もおすすめ

d.hatena.ne.jp

 

〔少女庭国〕

〔少女庭国〕

 

 

「コスプレイヤー榛名 妄想拡張ディスク」感想

 

この本は「艦これ」こと「艦隊これくしょん」のキャラクターを扱った本ではなく、艦これ」の“コスプレイヤー”を題材にした小説である。「艦これ」の榛名のコスプレに身を包んだ少女・春菜がカメコおじさんと肉体関係を持ち、深い深いコスプレイヤーの世界へとはまっていく――そんな話だ。

 

コスプレイヤーは我々に夢を与えてくれる存在に他ならない。ギラギラとした日差しが照る猛暑でも寒風吹き荒む荒天でもコスプレイヤーはコスプレをするのを全く厭わない。二次元の存在であるキャラクターたちが彼ら彼女らを媒介することによりあたかも三次元に現れたかのように錯覚する。

そんなコスプレイヤーを題材にし、さらにはそれらを汚す“コスプレイヤー同人”は我々に与えられた夢を壊すものではないか? いわゆる、ナマモノ系の同人と同様の問題を孕んでいるのではないか? 誰かを汚し、貶めてはいないか? いいのか? いいのか? こんな本出して? いいのか? いいんだよ!!!!!!

断じる。コスプレイヤー同人”は我々の夢を砕いてなどいない。我々に新たな夢を与えてくれる。それは可能性だ。コスプレが、コスプレイヤーが大好きな我々が、いつも胸中に抱いている可能性が、頭の中でめぐらせている妄想が溢れ出すのだ。それはとても自然なことで、何人にも妄想は止めることなどできない。

私達の妄想が拡張されるのだ。そう、この妄想拡張ディスクならね。

 

 

 さて、本編の感想だが、素晴らしい、素晴らしいただれ具合ですわぁ!!

コスプレを始めるきっかけを描写している第1章の時点でもう自分のドツボにダイレクトアタックかましてくる。きわめて真面目で優等生な風の高校生春菜ちゃんが初めてできた彼氏によって日常的に性欲のはけ口にされ、学校から帰ってはセックス。休みの日にあってはセックス。セックス、セックス、セックス&セックス……性技だけがどんどん身についていく。 

初めてできた彼氏が性欲に忠実すぎるおサルさんだったばかりに春菜ちゃんの心に闇が形成されていく。そんな中、彼氏にコスプレを勧められ……。

この完璧な流れには賞賛を禁じ得ない。一女子高生の心に闇が生まれる過程がとっても自然でエロくて面白いのだ。以降の章ではそんな彼女の膨らみきった闇が描かれる。

惜しむべくは膨らんだ闇が爆発する展開がないことだが、闇堕ち系エロ漫画でもそうだけど、どこをオチとするかっていうのはこれ系では非常に悩ましい問題で、個人的には成熟しきった闇を爆発させて存分にぶちまけてほしいところで、そういう意味で最近では新堂エル「変身」が最高の出来だと思うのだが、闇に消えていく感じな本書も悪くはない。

読んでいる途中は、頼りになっていたカメコおじさんが奥さんバレして、頼れる人が消えて新たに見つかった人が……みたいな展開期待したけど、そういう展開はなしですかね?

 

榛名改二 アーマーガールズプロジェクト 艦これ 全高約140mm 【魂ウェブ商店限定品】

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「ツイ4新人賞」を今更読んだので一人でだらだらくだをまく 前編

作品No.1『口に出すと口が気持ちよくなる言葉(仮)』

うーん、これそんなに気持ちいい?

口に出して読んでみてもあんまり気持ちいいと思えないんだよなあ、4コマのテンポとあってないのかもしれない。

「声に出して読みたい日本語」とか、あと星海社で公開している「六本木少女地獄」とかもそうだけど本当にテンポが良くてついつい口にしたくなる文章って見ただけで映像が頭のなかに浮かんでくるものだと思う。この4コマの文章は、絵の力を借りてもそういうのが浮かんでこなかった。絵自体はすごくかわいくて好みなんだけれど。配色もわりと好み。しかしこういう勢い重視の語感だけで攻めるネタは先駆者もいるからもっとひねりがほしい。

あと「口に出すと口が気持ちよくなる言葉」ってタイトルがすでにあんまり口に出したくないね。

 

 

作品No.2『あのねのネリネbyゆう』

コマとコマの間で流れがぶち切れてる印象。

これは1コマ1コマの情報量を増やせばすぐ緩和されると思うんだけど、例えば2つ目の「大人の嗜み」は1コマ目と2コマ目の情報量が少なすぎるからこれは1コマにまとめてしまっていいだろう。その上で最初に店長の幼女っぽい仕草を見せるコマを足せば3コマ目に至る流れも自然になるしキャラの魅力もぐっと増すのではないか。

次の「需要と供給」も1コマ目にオジサンにお酒を出すカットをいれるだけで流れもよくなるしネタの説得力もあがる。

「食い気味に行きます」は4コマ目でいきなり主人公が出てきて不自然になってしまっているので1コマ目をまず主人公がお客さんを迎える構図にしたほうがいい。

「決め科白」はもっとリアクションを取ったキャラの表情がほしい。

「使えるものは…」個人的に一番面白かったけれど2コマ目のいい雰囲気なのを表すコマに主人公の心象セリフを重ねてしまっているのがちょっともったいない。主人公のセリフは3コマ目にまとめて、2コマ目は店長とお客さんのやりこみをもっと密に描くべき。

「我ら希少価値故無共感」は乳比べのネタなのにおっぱいを比較する構図がないのはちょっと許せないですね~。

 

 

作品No.3『エスパー砂藤』

全体的にネタは面白いのだけれど、砂藤がエスパーなのを知る場面がインパクト弱いし、その後の流れ的にもわりとどうでもいいし、いっそ「俺の友達はエスパーだ」みたいな語り出しのほうがよかったんじゃないかと思う。

あと気になったのは効果音が控えめなところ。「男のロマン」のポヨンとかスケスケーなんて絵に遠慮しまくっている。もうちょっと主張して目立させたほうがいい。

 

 

作品No.4『宇宙飛ぶ公務員』

ケン・リュウじゃないけどこれもプロットが崩壊しているSFだなあ。

宇宙省という設定とイケメン5人がバラエティを作るって設定が全く繋がっていない。前半の設定がなくとも物語として問題なく成立する。それぞれの4コマもそうだけど全体として見た時の繋ぎも甘く、

起=宇宙人が来てイケメンだらけの宇宙省が設立される。

承=イケメンたちが焼肉屋で顔合わせ

転=宇宙へ行く

結=バラエティは成功。地球に戻る

物語にまったく起伏を感じない。流れのままに進行しているだけ。もう少し起承転結を意識しよう。

さらに根本的の問題はラフ書きすぎて誰が誰だか、何をしゃべっているのかがわからない。このままじゃどれだけ面白い話を描いても読者に伝わらないのでもっときちんと清書すべき。

 

作品No.5『平和ずきんの狼』

 すごく絵もうまいし、まとまっているのに全部読んだあとにかいつまめば「赤ずきんがかわいい話」くらいにしか印象に残らないのが悲しい。

問題なのは「ロリコンな狼」と「関西弁の赤ずきん」という2キャラをそれぞれ立てていかなければならないのに途中から“狼(読者)の視点から見る赤ずきん”の話にシフトしていて主役であるはずの狼のキャラが引き立っていないことだろう。ロリコンな狼というキャラが立たなければ必然的にロリな赤ずきんの魅力も薄れてしまう。赤ずきん視点からの話を描くだけで見え方がガラッと変わるのではないだろうか。

同じロリコンとロリを描いた4コマだと吉辺あくろの「絶対☆霊域」がそれぞれのキャラの魅力を存分に引き立てれていて面白いのでぜひ読んでみて欲しい。

 

作品No.6『石井飯』

常識が崩壊する瞬間を描くのは難しいものだなあ。

座談会コメントでも上がってるけど「となりの関くん」なんかだとツッコミ役(読者の視点)はギリギリまで常識を保っている。ボケが非日常の存在の場合、ツッコミがしっかり日常のラインをキープすることによって読者の混乱を防ぐとともに、物語への導入を担う。そしてそしてここぞという時にツッコミ(読者)の常識が崩壊するのだ。

この作品の場合、ツッコミ役の常識が崩壊するのが早過ぎる。4つ目の4コマで早くも揺らぎ始めて、7つ目では完全に崩壊している。読んでてついていけなかった。

同系統の作品でも「日常」なんかは絵のインパクトと勢いで無理矢理引っ張っているけど、そういうインパクトもないので、もっとタメを意識すべき。

 

 

作品No.7『コ豆』

わーこういうくだらないノリと寒いギャグのマンガすごい好きー。

しかし商業的にちょっとむずかしいというのもわかる。自分だって「豆しか出てこない4コマ」という説明だけされても読む気は起きないだろうし、「枝豆が納豆好き」なんて話はほとんどの人にとって果てしなくどうでもいい話題だろう。普通の人間キャラを追加して、そいつと豆たちとの関係性を深める方向に持っていけばまだギリギリいけるかもしれないが、そうするとこの作品独特の魅力も損なってしまいそうでジレンマ。

もやしもん」の菌劇場とか「攻殻機動隊」のタチコマな日々は本道があるから成立してる。脇道をメインに据えるのは現状では厳しすぎるか。

物語シリーズ作者の文字欠け小説

りぽぐら! (講談社ノベルス)

 

① 最初に感想文を制限なく執筆

② 五十音46字から、任意の6字を選択。

③ 残った40字を、くじ引きで10字ずつ、4グループに分ける。

④ その10字を使用しないで、①の感想文をグループごと4パターン、執筆する!

⑤ 濁音・半濁音・拗音・促音は、基本の音と同じ扱い。音引きはその際の母音とする。

⑥ ②の6字は、どのパターンでも使用可。

 

フリーワード:い う か し を ん

禁止ワード:あ な に ね ほ ふ む め る ろ

 

文字減らしという小説テクが存在す。特定の文字を使わずに小説を書くという試しだ。

この物語はその文字を欠くテクを用いて、3つの短編を4通り書き直すという実験小説だ。

 

最初の一作は妹が殺人してしまうストーリー。登場キャラも妹や友達、母、父のようなその他の言葉で置き換えやすく、制限も緩いのでまだわかりやすい。

 

次の一作は命をかけた博打を打つストーリー。この物語から文字の制限もきつく変じていくのだが、最初と比べ「将棋崩し」「参加者1(いち)」だったり固有の用語がキー用語として使われたり、「そこの山へ登山しよう」といった格言の引用も存在し、そのようではいかずとも厳しい物語へと昇華した。

 

最後の一作は意外、対話式小説で、「君の世界では~」という感じで語り部が読者に語らうのだ。対話式というだけでもすごく実験的だというが、この段では制限は十六夜(いざよい)に匹敵せし文字数。全文字数の四半が制限されようという最中、真っ当の短編を執筆できようか。そういう興味の付きぬ物語だ。

 

自身では一番簡単という制限でも良い説話を書く予感せず。ただ、この実験的試行は読み人より書き人が優として楽しいのではと思うのだ。

 ①の感想文:西尾維新のリポグラム小説「りぽぐら!」 

パターンA:西尾維新のリポグラムノベル「りぽぐら!」

パターンB:西尾維新の制限文字ノベル

パターンC:維新記す損字小説

りぽぐら! (講談社ノベルス)

りぽぐら! (講談社ノベルス)

 

 

維新記す損字小説

りぽぐら! (講談社ノベルス)

 

① 最初に感想文を制限なく執筆

② 五十音46字から、任意の6字を選択。

③ 残った40字を、くじ引きで10字ずつ、4グループに分ける。

④ その10字を使用しないで、①の感想文をグループごと4パターン、執筆する!

⑤ 濁音・半濁音・拗音・促音は、基本の音と同じ扱い。音引きはその際の母音とする。

⑥ ②の6字は、どのパターンでも使用可。

 

フリーワード:い う か し を ん

禁止ワード:お け さ ち と の へ も や ら

 

字を損ずる小説技法がある。はじめに決めた字を使わずに小説を書く試みである。

本書はそういう損字技法を使用して、短な三つ話を四パターンに修正する試し書き小説である。

 

まずはじめは実妹が人殺しをする話。出てくる人物だって実妹や友人、ママ、パパみたいで他言語に置換が容易、緩い縛りなためまだ理解が簡単。

 

ふたつ目は生命を賭した遊戯をする話。ここから字の縛りだってきつくなってくるんだが、はじめに比較すると「将棋崩し」「遊技人A」なんていう固有名詞がキーワードになっていたり、「そこに高い場所があるゆえに」みたいな名ゼリフを引用する場面があって、そうでなくたって厳しい内容になっている。

 

みっつ目は意外な二人称小説であり、「君ん世界では~」なんて感じで語り手が読み手に語ってくる。二人称って縛りでもうすでにかなり革新的試みであるに飽きず、これここに至っては縛りは16字。全字数より四半数以上が縛りになる中で、意味通じる小説を完成に運ぶにいたるか。そんな興味が付きない話だ。

 

自分では至極簡単な縛りだってろくな文章を記せる気がしない。ただ、文章を使う革新的試みは読む側より遥かに書く側が楽しいんじゃなんて考えてしまう。

 ①の感想文:西尾維新のリポグラム小説「りぽぐら!」 

パターンA:西尾維新のリポグラムノベル「りぽぐら!」

パターンB:西尾維新の制限文字ノベル

パターンD:物語シリーズ作者の文字欠け小説

りぽぐら! (講談社ノベルス)

りぽぐら! (講談社ノベルス)