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シリーズ最大のボリューム「キノの旅 XVII -the Beautiful World-」

キノの旅 (17) the Beautiful World (電撃文庫)
17巻はシリーズトップのページ数だそうで。なんでこんなに厚いかというと新聞連載分が収録されてるから。一つの話がさらに連載分に区切って細切れにされてるので分厚いのにスラスラと読める。


ボリュームがあるおかげか、キノ旅の魅力である皮肉・ファンタジー・ブラック・キャラ萌えがどれも詰まってて非常に満足できる1冊だった。
「鉄道の国」とか「楽園の話」みたいなファンタジー要素はすごくロマンが溢れてていい。ロマンがあればあるだけ皮肉のキレもマシマシである。ちなみにシリーズで一番好きな話は「迷惑な国」です。


それで、どの話もやっぱり面白くて「あー、今回もキノ旅さいこうだったわー」っていういつもの感想になるわけだけどさ。そんなことより言っておきたいことがあって、とりあえずこの記事の一番上を見て欲しい
スクロール(スワイプ)して一旦上に戻って確認してほしい。
確認してくれただろうか?


今回黒星紅白さんのイラストがめちゃくちゃかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいの。
まず大サービスとしてイラストノベル「ファッションの国」。ヤマもオチなく主要キャラがコスプレするだけという素晴らしいファンサービス。さらに今回もきっちり登場したフォトちゃんのかわいさも揺るがない、というかこの娘は登場するたびにかわいくなっていってる気がする。活躍こそしないけど幸せっぷりが全身からにじみ出ている。
あと個人的に「料理の国」のエプロン姿でほこらしげなキノの絵はかなり貴重だと思う。最後のページの満腹キノのかわいさも反則級である。
「恋愛禁止の国」の女の子は話の設定と相まっていままでのモブキャラの中でも一番かわいいんじゃないかってくらいだ。


今回は黒星絵を見るためだけに買ってもまったく損しないレベルであった。買った人は目次ページをずっと眺めているだけで幸せになれると思う。

おっぱいの夢を見る人間と血を吸う夢を見る吸血鬼 『ヴァンパイア・サマータイム』について

ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)


石川博品といえば官能小説も真っ青のドエロ小説を一般向けライトノベルレーベルで書き続ける作家として有名である(大ネルリの歪曲!)
新作がいまさらすごいすごいと大合唱されているがすごいというかエロい。エロすぎる。
みんなエロエロ連呼してもどんびかれるだけなので仕方なくすごいで代替えしてるが自分は声を大にして叫ぼう。「ヴァンパイア・サマータイム」超エロい!!


第一に禁忌を犯すエロスである。
「ヴァンパイア・サマータイム」では社会に適合した普通の存在として吸血鬼が描かれる。昼間の世界を過ごす人間と夜の世界を過ごす吸血鬼。両者には大きな差はないがその間にはひとつのタブーが存在する。
吸血鬼は人の血を吸ってはいけない。人の血を吸うなんて異常者だ。輸血パックがあるのにわざわざ人から直接吸う必要がない。人の血を吸うのは犯罪だ。
吸血鬼の少女『冴原綾萌』はいつもいくコンビニで働いている人間の少年『山本頼雅』の血を吸う衝動に駆られる。ずっと彼を意識し、夢にまでみて、そんな自分に葛藤する。
吸血をあれだけエロく書く変態はあざの耕平くらいかと思っていたが、こちらもなかなかの変態っぷりである。本番(吸血)にいたっていないという点ではこちらのほうが寸止めの美学的に見てより変態度が高いかもしれない。


第二に時間と距離の生み出すエロスだ。
吸血鬼は陽の光を浴びれないゆえに日の暮れた夜の間に活動する。昼に暮らす人間『頼雅』と夜に暮らす吸血鬼『綾萌』が出会えるのは夜(吸血鬼にとっては朝)『頼雅』が親の店の手伝いをしている時間のみ。それも、夜が短くなる「ヴァンパイア・サマータイム」の間のみだ。
同じ学校の同じクラスという近しい関係だが、二人にとって互いの時間の隔たりは絶望的だ。いっそふたりとも吸血鬼になれば、そして「このまま、君と、灰に。」
この文言は文庫の帯にも書かれているのだが、書店で見ると目を覆いたくなるほどエロい。こんなけしからん文句を公の場に晒していいのか。


最後に直球的なエロス。
ライトノベルのラブコメ作品にはエロのスイッチというものがある。エロゲやアニメのように演出でエロシーンの切り替えができないライトノベルは主人公の意識でシーンを切り分ける。
エロスイッチがオンになると急にヒロインを意識しはじめて描写もやたら艶めかしくなる。だいたいのラノベ主人公はえろいことするときとしない時をくっきり分けている。物語が進んでいる時に急にムラっときたりしない。
しかし本作はほとんどエロスイッチオンである。主人公どころかヒロインまで発情期全開である。いつでもどこでもなんかムラムラっとしてる。そして感覚が鋭敏になっている。
真夏の夜のまとわりつくような蒸し暑さや、闇に吸い込まれるような静けさや、肌を流れる汗の感覚が、そのまま伝わってくる。
「ヴァンパイア・サマータイム」を読んだ夏の夜は、きっと一生忘れないだろう。


北海道はもう夏も終わりだが、本州ではまだ残暑が残る時節だろうか。
未読の方は夏の終わりに是非読んでみてほしい。



OP-TICKET GAME(土橋真二郎)読了

OP-TICKET GAME (電撃文庫)
紛れも無い傑作でした。
人生における喜びとか悲しみとかそんな究極な部分がそのまま描かれてる。
やってることは一見アホの極みだけど一度読んでしまうと少しも馬鹿にできるところなんてない。なんて隙のない展開・構成。


すこし説明をすると、作品のタイトルにあるOP-TICKETというのはおっぱいチケットのことだ。

願いが叶うチケットがあるという。それは学校伝統のチケットで、使用者の願いを叶えるのだ。そのチケットを手にすることができるのは男子に限られ、そして願いを叶えるのは同級生の女の子だという。その名は―おっぱいチケット。

この説明だけ読むと大抵の人は「そんなアホな」「馬鹿馬鹿しい」こういった感想を抱くだろう。
しかし、しかしである。このどうみてもフィクションのアイテムであるチケットが本当に存在するとしたら―――どうする?
さすがに現実にそんなものは存在しない。しかし作中のチケットは現実に存在してもおかしくないと思えるだけの説得力と効果を持って描かれる。いままで多くのゲーム小説で現実以上の生々しさを描いてきた土橋真二郎が、青少年―――いや、全ての健康的な男子の夢を現実のものとして描き出した作品がこの「OP-TICKET GAME」なのである


さあ、おっぱいチケットは配られた。あとは目の前のチャンスをものにするだけ。そんな状況に置かれれば誰でも真剣になるだろう?
真剣に夢を追い続ける。そんな人には是非この「OP-TICKET GAME」を読んでほしい。
そうじゃない人とは、ちょっと友達になりたくないです。

演じられたタイムトラベル(土橋真二郎)読了

演じられたタイムトラベル (メディアワークス文庫)


 作者の前作である「生贄のジレンマ」が実写化するそうだが、実写という媒体でこの作者の作品の良さを引き出せるかは甚だ疑問だった。たしかに「生贄のジレンマ」の舞台装置は大掛かりで、映像にするとよく映えそうではあるがあくまであの作品のポイントは、ギリギリの状況での登場人物の心理描写であって。ただたんに大きな舞台装置と綿密なシステムを揃えればあの緊張感が出せるかというと、違うのではないかと、ずっと思っていた。
 本作を読んでその思いは強まった。
 今回の舞台装置は、床に方眼が描かれたただっぴろい密室。それだけである。その密室で登場人物たちは、「ショッピングモールの中でゾンビから逃げている」という状況を演じなければならない。実際にはもちろんゾンビなんておらず、壁も敷居もない。物品もない。そんなただの密室の中をキャラクターたちは逃げ惑う。いないゾンビから必死で逃げる。実際にはいなくとも、プレイヤーにとっては紛れもなくそこにショッピングモールが、ゾンビが存在している。読者としてはただただ圧倒されるばかり、これでこそ土橋真二郎である。


 肝心のゲームシステムの方は正直いって詰めが甘々である。しかし素人制作のゲームという設定とオチで、作品としてうまく整合性がついているのがすごくずるい。ラストは賛否両論ありそうだが自分には好みの終わり方だった。
 同著者の殺戮ゲームの館と世界観がリンクしているので、もし興味があるならそちらから読むことをおすすめする。こちらだけでも楽しめるので無理に読む必要はない。
殺戮ゲームの館〈上〉(土橋真二郎)読了 - 主にライトノベルを読むよ^0^/ はてなブックマーク - 殺戮ゲームの館〈上〉(土橋真二郎)読了 - 主にライトノベルを読むよ^0^/

緋の水鏡〈上〉〈下〉(くしまちみなと)読了

緋の水鏡〈上〉 (創芸社クリア文庫)
緋の水鏡〈下〉 (創芸社クリア文庫)


「貴様を倒して生き延びる!発火(カンパッション)!」
ん~~~~~~いいねいいねいいねこれは熱い
クトゥルフ神話と日本神話を合わせた伝奇モノなのだけど、和風な雰囲気をバッグにクトゥルフ神話の残忍で容赦のない展開が怒涛に押し寄せるのが楽しい。
情報の出方や展開の仕方でTRPG意識しているのかなとは思ったけど、どうやら元はノベルゲームのようで、道理で完成度が高いわけだ。


主人公の家系は神にまつわる一族で、そのおかげで主人公も人ならざる力を使えるのだけど、クトゥルフ神話の神々を前にしてはそんな力あってないような物だ。特殊な家系なのに敵を前にすると他の子供たちとなんら変わらない、しかしその家系ゆえに次々と化け物に狙われる悲惨さ。その悲惨な境遇の中でも己を鼓舞し、非力な力でも立ち向かっていく勇敢さ。そんな主人公を支える仲間たちの頼もしさ。しかし容赦なく押し寄せる異形のものどものおぞましさ・・・。
読めば読むほど世界観にのめり込まれていく。
なかでも見どころは日本神話の伝承に合わせて描かれる恋愛模様。ヒロインがほんとかわいくてかわいくて。メイド好きは必見。巫女好きにもおすすめ。


ラストは勢いで押し切った感があるけど、原作では他ルートもあるようなので拾われなかった伏線などはそちらで回収されていたりするのだろうか。原作ゲームをやる機会はおそらくないのでもし可能ならば他ルートも出版してほしいところである。

緋の水鏡〈上〉 (創芸社クリア文庫)

緋の水鏡〈上〉 (創芸社クリア文庫)


緋の水鏡〈下〉 (創芸社クリア文庫)

緋の水鏡〈下〉 (創芸社クリア文庫)

インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI(米倉あきら)読了

インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫)


すごい面白いけど酷評されるのも納得な1冊
強姦などの犯罪要素が文脈で何の疑問も挟まずに肯定されてるので、そこを忌避する人の指示は得られないだろうなというのが一点。
常識やセオリーといったものを引き合いにだしておいてあえてそれを完全無視(または否定)して読者をおちょくっているのでそこを許容出来ない人には合わないだろうというのが一点。
主人公、ヒロイン含めまともなキャラが登場しないため、感情移入しながら本を読む人はつまづくだろうということが一点。
これらのハードルを突破してはじめて楽しめる。よくこんなのを商業作品として出そうと思ったものだ。この作品に賞をあげたHJ文庫編集に敬意を表したい。よくこの痛快な作品を世に出してくれた。


褒める部分はいろいろあるが一言で表してしまうと、この作者センスがよすぎるのだ。
女子中学生をレイプするという着想からそれを肯定する舞台構造、作品構造を考えるってだけでも常人にはマネできない。というか常人ならそんな論理の飛躍はしない。レイプは犯罪。忌むべきもの。この常識を覆せない。そもそも覆そうと思わない。
「そんなのありか!」と何度途中で突っ込みを入れたことか。しかし「あり」なのだ。他の作品や社会的に否定されている事が、この作品では肯定されてしまう。社会的禁忌の肯定にミステリ的禁忌を平然と扱う。
最後までミステリ者に泥を投げる構造なのでミステリ者と私ミステリ者じゃないよって人と女子中学生はぜひ読むべき。
比良坂さんは「比良坂さん的ヒロイン」という造語が作られてもいいぐらい魅力的なのだけど、その言葉を使うべきヒロインが他に思い浮かばないのが困りもの。


インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫)

インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫)