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『女騎士さん、ジャスコ行こうよ』このタイトルを見るたびに「勝手にジャスコ行けよ」という他人目線な感想を抱いてやまない

女騎士さん、ジャスコ行こうよ (MF文庫J)

 

 勝手に行っとけ! と思わず突っ込みを入れたくなるようなタイトルの伊藤ヒロ新作で、「タイトルは緩そうだけど、いつもの伊藤ヒロなんでしょ?」と思ってたらいつものようでいつもじゃなかった。

 

田舎ネタとRPG……というか作中でも繰り返し言われる”低価格エロゲー”のネタをこれでもかとごった煮にした闇鍋のような作品。やはり伊藤ヒロの最近のラノベ認識は間違っている

togetter.com

 

終始、田舎ネタとパロディネタが展開されてそれらのキレのよさも抜群であり、特に田舎ネタに関しては田舎リサーチが完璧で、田舎ネタそのものよりも作者の田舎知り尽く具合に笑うレベルである。

 

というわけで「パロディやカオスなネタの応酬に耐性がある人にはいろいろと新鮮に楽しめる良作」と言いたいところだが自分は楽しめませんでした。なんでや!

この作品の変わっているところはパロディを前面に押していながらストーリーもしっかりしているところなのだが、そのストーリーとネタがうまく絡んでいない。ストーリーはいい。ネタもいい。しかしそれぞれが独立してる。噛み合ってない。同じ田舎を軸にしたストーリーとネタなのにまったくフィットしていない。

なぜ噛み合ってないかというと、視点が一つに定まっていないからなのだが。

この作品は、転生してきたことに対しやたらリアクションが薄い田舎住民に突っ込む異世界人と、異世界から来た面々の非常識というよりもはや頭のネジが2,3本吹き飛んでる振る舞いに突っ込む田舎住民によって成り立っている。漫才でいうならWボケ・Wツッコミだ。ネタを楽しむ時は、読者はこの二つの視点をそれぞれ意識する。

対し、ストーリーはジャスコに行きたい異世界人の視点で描かれる。読者はその視点から物語を追おうとするが、そんな時も容赦なくネタは挿入される。視点の切り替えを強制される。

さらに容赦なく襲いかかるのはメタネタだ。随所で挿入されるメタネタによって読者は神の視点に戻される。こうなってしまえばもうどうしていいかわからない。物語にまったく集中できない読むのが辛い。ところどころにお寒いネタを挿入する自主制作映画を見ているような気分になる。

 

キャラの視点に立たないとストーリーは楽しめない「ジャスコ? 勝手にいってろよ」

双方の視点に立たないとネタは楽しめない「異世界の常識も田舎の常識も知らないし」

ひたすら読むのに疲れる。