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「グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業1」TRPGの楽しさがぎゅうぎゅうに詰まった一冊

グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業1 (富士見ドラゴンブック)

 

 

実際のTRPGプレイ風景を書き出した、TRPGリプレイの1冊。

ストーリーを簡潔に表せば、正義の君主がモンスターたちを統べる魔物の王「魔王」になってしまうという最近流行りの”やさしい魔王さま”系統の物語の一種だ。それだけならままある物語のうちの一つかもしれないが、そういった物語が成立する過程がまじまじと描かれるのはTRPGリプレイという媒体ならではだろう。

 

 

本書の書き出しは、キャラクターが冒険をしているシーンでもなく、地の文での語りでもなく、TRPGGM(本書の作者)がどんな物語を作るか計画しているところから始まる。楽屋裏スタートだ。どういう物語を創ろうか計画し、その物語に合わせたプレイヤーを考える。招いたプレイヤーがどういう風に動いていくか思索し、それに合わせてさらなるストーリーを考える。TRPG経験者はわかると思うが、至福の時間である。自分の思うがままに世界や物語をデザインしていくのだ、楽しくないわけがない。

シナリオ(物語)が出来上がると実際にプレイヤーを招いてプライングが行われる。プレイヤーはそれぞれ自分の分身であるキャラクターを創造し、それに合わせてGMのシナリオもさらなる肉付けがされる。

 

 

そういって出来上がる物語は全てがGMの想定どうりに進むわけではない。世界の創造主たるGMにも想定外が起こるのはTRPGの大きな魅力の一つだ。

本書では、本来ならば倒すべき目標であったモンスターたちを救おうと、プレイヤーたちが動き出すのだ。そうした動きに答えようとGMは新たな物語を紡ぎだす。そして1人では決して創り出せなかった物語が結実していく。多少の軌道修正はよくあることだが、シナリオの根幹が揺らぐようなハプニングは他のリプレイ本でも実際のTRPGプレイでもなかなか遭遇しないレアな状況である。それゆえに本書はめちゃくちゃ面白い。

 なんせ、読者どころか作者すらも先の展開がわからない。物語が形作られていくその瞬間を目撃できる。自分たちで物語を紡いでいくというTRPG独特の面白さが引きだった1冊だ。読んだ人はみなTRPGをやりたくなるに違いない。

 

その他にも魅力的な要素は多い。

プレイヤー4人はみな魅力的な人ばかりで、みんな自然なロールプレイなのでキャラクターに中の人の性格がにじみ出てくる様はクスリと笑ってしまう。それぞれの息もばっちりで掛け合いの面白さもひとしおだ。GMが繰り出すNPCも面白おかしく、ゲームの場を盛り上げる。その他にも書ききれない魅力はいっぱいある。

ルールや世界観の説明も丁寧でグランクレストを知らない人はもちろん、TRPGを知らない人にもおすすめしたい。

 

 

 

契約、洗脳、籠絡、悪堕ち……配下を増やしてダンジョン強化のダークファンタジー「魔王の始め方」

魔王の始め方1 魔王の始め方シリーズ (ビギニングノベルズ)

 

出版社様から献本を頂きました。

先日紹介した「姫騎士がクラスメート!」と同じくビギニングノベルズの作品である。 

つまりエロ小説なんだけど、ガッツリエロだった姫騎士とは違ってこちらはエロ要素のあるダークファンタジー。 邪悪なる魔法使いである主人公がダンジョンを作り、それを足がかりに魔王として君臨していくという話で、設定自体は最近だとそこまで珍しいものではないが、この作品が他と変わっているのは表紙だとすごいイケメンに描かれている主人公だが実際はヨボヨボのジジイというところである。魔力の力を使って若返り超絶イケメンになる。魔力のちからってすげーっ!

というわけで見た目はただのイケメンだが、その頭脳は何十年と生きてきたジジイのソレである。そのジジイならではの知恵と人心掌握能力で自らの住まうダンジョンをどんどん拡張していく。年を取るまで花開かなかった魔法使いなので魔力だとか戦闘力はからきしなのだが、知略を駆使して力を蓄えていく様は読んでいて痛快

少年向けの創作では大きな力を持っているが精神的には未熟な主人公モデルが多いが、これはその逆である。精神成熟したジジイである。悪逆非道も躊躇なしである。実に読んでいて気持ちがいい。

 

物語の展開も面白かったが、何よりよかったのは洗脳シーンだ。

魔法という便利なものがある世界観ではあるが、洗脳魔法かけて「はい終わり」というわけにはいかない、そりゃもうじっくりねっとりと時間をかけて相手を洗脳・籠絡・悪堕ちさせていく。その手管も様々で、普通に支配下に置くだけじゃ制御しきれない相手もうまく絡めとっていく。記憶の刷り込みや性的な調教、無知な幼女に教育みたいなエロゲでもなかなか味わえないシチュエーションもあり、洗脳好きにはたまらん内容となっております。

2巻が出るのが楽しみだ。

 

 

男子高校生の性欲が爆発する!『この恋と、その未来』

この恋と、その未来。 -一年目 春- (ファミ通文庫)

 

一つ前の記事で純粋すぎるくらいの恋愛ラノベを紹介したが、そっちが徹底的にプラトニックな世界観を貫いていたのに比べるとこちらの作品は性欲が大暴れである。暴れん坊将軍である。

 

新しく始まった高校生活で男子寮の同室になった相手は性同一性障害の女の子だった。

はい! その設定、ナイス!!

いや、性同一性障害についてすごく真摯に描かれてはいるのだが、どれだけ「俺、身体は女だけどメンタルは男だから、そこんとこヨロシク」なんて言われても、主人公の眼前に突き刺さるのはおっぱいである。「それ日常生活で隠すの無理あるだろ!」と突っ込まざるを得ない豊満なバストが同室生活の主人公を誘惑していく。

なんか汚い話から始めてしまったけどヒロインの未来はおっぱいとか抜きにしてもすごくかわいいので、健全な男子高校生がそんな子と一緒に檻に入れられれば、もう辛抱たまらんってなもんですよ。好きにならないわけがない

 

しかし、森橋ビンゴ主人公である。

そんなところで迷わず「俺、実はお前のこと……」なんて言えるようならいままでの森橋ビンゴ作品は世に出てはいない。

秘める。徹底的に秘めるのだ。この思いを伝えたら、全部壊れてしまうから。

東雲侑子の感想記事でも書いたが本当に森橋ビンゴ作品の主人公はこれだから嫌いだ。変化が怖いから何もできない。何もしない。


「ラブホに取材などと称して男女で入って結局なにもせずに出てくる系のラノベ主人公」が嫌いです。『東雲侑子は短編小説をあいしている』 - 主ラノ^0^/ ライトノベル専門情報サイト

 

 

今作の主人公とヒロインの二人は同じ寮の同じ部屋でこれからの高校生活を過ごす。

毎日、どころではなく毎朝、毎晩と顔を合わせる。そして同性の友人、親友のように触れ合う。

もうすでに彼の気持ちに火は付いている。その火の着いた導火線がいつ着火するのか、いつまでそれを抱え続けられるのか。

この恋と、その未来には果たしてどんな結末が待っているのか。

 森橋ビンゴの作品はいつも先が気になって気になって仕方がなくなる。

 

自分の居場所はどこにあるのか「知らない映画のサントラを聴く」

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

 

 

この物語の主人公は自分と似ている。

23歳で独身で無職で親元に寄生していて目的意識は薄く、自分が承認を受ける場所を求めている。

もちろん自分は女ではないし、まるっきりの無職でもない。バイトをして得た、多少のお金を実家に納めて過ごしている。

しかし本質的には彼女となんら変わりはない、彼女は家事全般を受け持つことで、なにもしない無職が家に住んでいいという権利をもらっている。「ここは自分の家だし、この家には自分が必要だ」という承認を受けたつもりになっている。しかし心の奥底では思っているのだ、ここには自分は不必要だということを。

 

 

子供のころは誰しもが認めてもらえる、どんな陳腐なことでも周りの大人たちは笑ってくれるし褒めてくれる。子供のころが楽しかったのはそれが子供だったからである。子供のころはなんでもできる気がしたし、実際やろうと思えば何だってできたのだ。

 

 

知らない映画のサントラを聴く」は自らの存在の話である。

別に哲学的な内容ではない、誰にでもある普通の話だ。23歳無職がとある事件を通して、何のために自分がここにあるのかを考える話だ。

突如家を追い出された23歳無職女・枇杷。いつも枇杷を支え、認めてくれた親友・朝野。大切な親友の元カレ・昴。三者とも、自分の存在が何のためにあるのかを必死で探し求めている。探して探して回って回って空転しつづけている。

その姿が、姿勢が、行動が、感情が、ただただエネルギーに満ち満ちているのだ。

 

 

人は、大人になったその時から自らの承認の場所を探し続けていくのだと思う。

なにか躓くときもあるし、ふらふらと倒れる日もあるけれど、再び立ち上がって、速度を上げて、回りだすのだ。

自分も回ってみようか―――そんなことを思える、パワフルな1冊だった。

 

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫)

 

 

まさかのテッサ降臨「フルメタル・パニック! アンダカヴァ」

フルメタル・パニック! RPGリプレイ フルメタル・パニック!  アンダカヴァ (1) (富士見ドラゴンブック)


あの名作「フルメタル・パニック!」がTRPG化!!……したのはいいものの、ルールブックもリプレイも誤字だらけなうえ発売から1週間経つのに未だに公式サイトがオープンしないんですが。散々公式サイトを参照しようとか公式サイトからDLしようとか書かれているのに、どこにもその公式サイトが見当たらない。富士見のせいなのか、FEARのせいなのか、バレルロールのせいなのか、それとも小太刀右京のせいなのかよくわからないがもっとしっかりしてほしい。せめて遅れるなら遅れるで読者にちゃんと告知していただきたい。


そんなゴタゴタが続いていて小太刀右京大丈夫なのかと不安にはなるが、このリプレイの出来に関しては大丈夫だった。(誤字は多いが)
なんといってもこのリプレイ、あのテッサが、テッサが降臨しているんだよ!!!!!!!
これだけは声を大にせずにはいられない。ただ声優のゆかなさんがTRPGをやっているだけじゃない。テッサがそこにいるのだ。
プレイヤーとして招待されたのは、
フルメタアニメ版テッサ役でおなじみの声優、ゆかな
ラノベ作家として活動しながらTRPG関連にも多く関わっている、桜井光
TRPGの大ベテラン。乾真一
みんなご存知原作イラスト担当。四季童子
この4人。超豪華メンバーだ。
しかし読者にとってはわざわざTRPGのゲストとして声優を呼ばれても活字媒体なのだから声も聞けないし、何の面白みもないじゃないかと思うところだろう。自分も読む前はそう思っていた。だから最初は騙されたと思って読んでみてほしい、そこにテッサはいる。
まずGMがセッション中に台本を取り出してテッサの登場シーンを本人に生アフレコさせる。これだけでもにくいファンサービスなのだがすごいのはそれ以降だ。セッションの途中いたる箇所で不意打ちのようにゆかなが消えてテッサが現れるのだ。その神出鬼没ぶりは活字で読んでもびっくりさせられる、実際に対面してプレイしていたGM・PLにとってはものすごい衝撃だっただろう。テッサ役のゆかなさんがテッサというキャラクターを理解しすぎているおかげで、完璧なタイミングであらわれ完璧なロールプレイをしてのけるのだ。あまりに堂々としたロールプレイのせいでこの人が初心者枠として呼ばれたことを忘れかける。テッサではなく自分のPCをロールプレイするときもさすがの堂の入り方である。
TRPGリプレイには時として「うますぎて参考にならない」ということがあるが、ゆかなさんのキャラクターの心情にどんどん入り込んでいくロールプレイはぜひ参考にしたい。


初心者でありながらプロっぷりをみせつけるゆかなさんとその他のベテランプレイヤーたちが紡ぎだす物語を本書はうまく即興劇としてまとめれている。
プレイ風景そのままの書き起こしではなく後から演出を重視し加筆された部分も多いが、プレイヤーたちの起こす行動で展開が自由に分かれていくというTRPGの面白さが十二分に表現されていた。


ストーリーは日本の高校に通うウィスパードの少女(ゆかなさんのPC)を護衛するためにミスリルの傭兵たち(他のPC)が学校へと潜入し、テロリストと敵対していくというフルメタ本編を踏襲したものとなっている。
ただ本編をなぞらえただけでなく、本編で描かれないところをうまく拾いつつ外伝的な独自要素を散りばめ原作ファンにとても嬉しい作りだ。
そしてこのフルメタRPGでは本編といかに折り合いをつけるのかという部分も楽しみの一つとして設定されている。
プレイヤーは本編通りの未来をたどりミスリルを描くのか、ifのストーリーを展開するのか、もしくはサザエさんのように同じ時間を繰り返すのか、それとも本編で描かれなかった宗介たちの活躍に隠された部分を描くのか、すべて自由に決められるのだ。
このリプレイはシリーズ化し続いていくようなので、PCたちがどういう歴史をたどるのかという点も非常に興味深い。
宗介やかなめではない、もう一つの「フルメタル・パニック!」を味わえる素晴らしいリプレイでした。TRPG初心者へのガイドも徹底しているので原作ファンにはぜひ読んでほしい。

フルメタル・パニック! RPG

フルメタル・パニック! RPG

世界は既に「リライト」された。

リライト (ハヤカワ文庫JA)
SF史上最悪のパラドックスかどうかは知らないが、少なくとも自分がいままで読んだ中で最悪のパラドックスだった。
散りばめられた理不尽と不条理が終盤にかけて一気に収束し、さらなる理不尽な結末へと収束するこの気持ち悪さ。病みつきになり読了後すぐに数回読みなおした。
全てのパーツがつながった時の電流がながれるようなあの閃きと、その後すぐに襲いかかる絶望が読者を虜にする。


ここまでで内容が気になった未読の人は、すぐに上の画像からamazonに飛んでこの記事は閉じ、読み終わってから再度訪れてもらいたいが、そうじゃない人のためにもう少し内容に触れる。

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「まどかマギカ」の新房監督が絶賛した魔法少女ラノベ『魔法少女禁止法』

魔法少女禁止法1
新房監督をして『こんなに残酷で面白い魔法少女ものがあったなんて! ! 』と言わしめた作品。
「まどマギの監督が”こんなに残酷で面白い”なんて言ったところでどの口が」と思われる人も多いとは思うが本当に残酷で面白いんだから仕方がない!!
多くの少女たちが魔法の力を手にし、異世界からの侵略者を倒し、世界の平和を守り輝いた魔法少女時代。その時代から10年後、敵がいなくなり魔法少女は不要とされた世の中で一人戦い続ける非合法魔法少女おしゃれ天使スウィ~ト☆ベリー。彼女はかつての仲間の死に異変を察知し、「魔法少女狩り」の調査を始める。巻き起こる不可解な事件の数々、そして魔法少女同士の戦い。
・・・そんな内容で発売され、当時ラノベ版ウォッチメンとして話題を呼んだのがアンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)であり。
それを大幅に改稿・加筆修正しさらなる変身を遂げたものが本作「魔法少女禁止法」なのだ。
ダークなテイストはそのままにより残酷に、より凄惨に、より絶望的に根本的な設定部分からの見直しがされている。
魔法少女は簡単に死なない死ねないなんて基本であり。他にも様々な魔法少女の恐ろしさ、悲しさ、虚しさが描かれる。作者は魔法少女に恨みでもあるのかというくらいに肉体的にも精神的にもきつい描写がてんこ盛りである。そんな悲惨な事実や状況があいついでも己が正義のために全力で戦い続ける魔法少女たち。こんな話が面白くならないわけがない!


さらにさらに、一迅社文庫時代は惜しくも続巻が出ないまま終ってしまったが今回はすでに1月に2巻の刊行が決定されている。あとがきによれば3巻が出るのも決まっているようだ。
2巻では新世代の魔法少女と魔法少女の全面戦争が描かれる。未読の方は一刻も早く1巻を読んで、来たるべく魔法少女たちの戦いの行方をその目に焼き付けよう。




この本から読んだ人たちは機会があればもとの一迅社文庫版も読んでみてほしい。
本書とは180度真逆の展開が楽しめる上に、kashmirさんのイラストが素晴らしい。
koiさんもかわいい魔法少女を描かれるがkashmirさん絵のかっこいい魔法少女が見れなくなってしまったのは悔やまれる。

魔法少女禁止法1

魔法少女禁止法1

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)